7/10-19にニューヨークの国連本部で開催されるHigh Level Political Forum(以下HLPF)が、間近に迫って来ました。この会議では、各国の持続可能な社会を作っていくための取り組みやその進捗状況の共有、実施の方法を確認し、さらに取り組みをもっと推進するための議論が行われます。SDGsを含む持続可能な開発のための2030アジェンダでは、目標達成のために、各国政府は全てのステークホルダーと共同での実施が求められています。
では実際、日本においてはどのようなSDGsの取組みが行われているかを、「①日本政府の取組み」「②市民社会の取組み」「➂民間セクターの取組み」に分けて見てみましょう。
①日本政府の取組
【政府の体制とビジョン】
日本政府は、関係する行政機関の相互の連携を通してSDGs施策の実施を行うために、SDGs推進本部を設置しています。またHLPFなどのSDGsに関わる国連会議では、主に外務省が国連と日本政府、市民社会や他のステークホルダーとの連携を担っています。 内閣に設置されたSDGs推進本部は、SDGs実施指針の取組状況のモニタリング、指標の策定や修正も含む実施指針の見直し(フォローアップとレビュー)、各ステークホルダーとの連携の推進、SDGs実施に関する広報や普及啓発活動を行います。 日本の実施指針には、「持続可能で強靱,そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す。」というビジョンがあります。そして実施原則は、①普遍性、②包摂性、③参画型、④統合性、⑤透明性と説明責任の5つです。日本政府は、開発に関する国際的な取組を踏まえて、分野別開発政策(イニシアティブ)を策定するなど、戦略的に開発協力を行うことを目標としています。
【ステークホルダーとの連携】
SDGsの実施、モニタリング、フォローアップ・レビューに当たっては、省庁間や国と自治体の壁を越え、公共セクターと民間セクターの垣根も越えた形で、NPO・NGO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体、地方自治体、議員、科学者コミュニティ、協同組合等、幅広いステークホルダーとの連携を推進しています。そのためアジェンダの推進と実施について、関係府省庁とステークホルダーの代表で構成されるSDGs推進円卓会議を設置しました。 2016年12月には、円卓会議での議論を踏まえ、SDGs推進本部によって日本のSDGs実施指針が制定され、2017年のHLPFでは日本政府として初めての「自発的国別レビュー」(Voluntary National Review: VNR)が行われます。他には、環境省が実施しているステークホルダーズ・ミーティング、文部科学省と環境省が事務局を務める持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development:ESD)のための会議も開催されています。
【フォローアップ・レビュー】
High Level Political Forum(HLPF)を通じたフォローアップ・レビューとして、2017年には自発的レビューを行うほか、SDGs実施指針の取組状況の確認や指針の見直しを行った後などにも積極的に参加するそうです。政府の発表によると、最初の取組状況の確認及び見直しは、2019年に開催される次回の首脳級のHLPFを見据えた2019年までを目処に実施を行い、また、その後も首脳級のHLPFのサイクルに合わせて、少なくとも4年ごとに取組状況の確認と見直しの実施を検討しているそうです。そして、これらのフォローアップ・レビューにおいても、SDGs実施指針の策定時と同様、広範なステークホルダーの参画の下に行われます。
②市民社会の取組
日本の大きな市民社会ネットワークの紹介をします。
【一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)】
【一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)】 SDGsの達成を目指して行動するNGO/NPOなどによって2016年に発足しました。日本の市民社会の中でも幅広い連携・協力を促進し、⺠間企業、地方自治体、労働組合、専門家・有識者などとの連携も進めています。SDGs実施指針策定時も、SDGs推進円卓会議への派遣を行いました。JYPSが参加する省庁や政党とのHLPF関連の会議には、このSDGs市民社会ネットワークのものが多いです。
以下に、市民社会がどのようにHLPFに関われるのかの例をご紹介します。
【円卓会議】
円卓会議とは、行政やNGO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体などの幅広い分野からの関係者が出席して行われる日本のSDGs推進のための会議であり、この1年間に官邸で3度開催されました。この会合ではHLPFに向けた政府内の準備状況の説明や、市民社会によるHLPFでの日本の発表内容の意見が出されることもありました。【HLPFに関する外務省・NGO意見交換会】 今年5/11に、外務省と市民社会が同じ場所に集い、HLPFにおける日本の報告等についての討議が行われました。NGOからはSDGsの各目標についての議論が提示され、JYPSも加わりました。
【公明党SDGs推進委員会ヒアリング】
今年6/12に衆議院議員会館で開催された会合では、日本のSDGs実施に向けて、各ステークホルダーから公明党SDGs推進委員会へのインプットが目的とされました。
【HLPF派遣やHLPFでのイベントの開催】
国連会議はメジャーグループやNGOなど、市民社会も参加できます。日本の市民社会からもHLPFには何名も参加し、JYPSでも派遣団が作られています。またそのご紹介は後日のブログで詳しく紹介する予定です!
➂民間セクターの取組
UNDP(国連開発計画)は、SDGs達成のためには大規模な多国籍企業からローカルな小規模企業や組合などを含む、民間セクターとの連携が必要不可欠であると考え、以下の内容を民間セクターが貢献できるものとして挙げています。
1, 貧困層のための雇用の創出、必要な商品・サービスの提供
2, 活力ある経済成長により、社会経済基盤への投資に不可欠な税収を増やすこと
3, 大規模な多国籍企業や地元市場に貢献する小規模企業や組合による、エネルギーと環境の持続可能な開発、危機予防、ジェンダーの平等、民主的ガバナンスなど、UNDPの広義の目的達成への貢献
HLPFでも、効果的に日本政府の取組みを発信する観点か、関係省庁や国際機関だけではなく民間企業等とも協力して、サイドイベントや 日本政府主催レセプションの実施が予定されていることからも、民間セクターは日本のSDGs達成に必要なものであると認識されていることが分かります。
そのなかで、いくつかの民間セクターの取組みをご紹介します。
【グローバル・コンパクト】
国連グローバル・コンパクト(以下UNGC)は、企業や団体がSDGsの実現をするための取り組みです。UNGCは、1999年世界経済フォーラム(ダボス会議)で当時の国連事務総長であったコフィー・アナンによって提唱されました。UNGCに署名する約160カ国1万3000を超える団体(うち企業約8,300)(2015年7月時点)は、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗の防止など10の原則の実現を目指しています。
【SDGsビジネスアワード】
日本企業でビジネスを通じてSDGs達成に貢献する企業を世界に公表し、国際的評価を通じた事業機会やネットワーク拡大の機会を増やすため、一般社団法人BoP Global Network Japanと金沢工業大学によって、「SDGsビジネスアワード」が創設されました。表彰対象となった事業は日本を代表するSDGsビジネスとして日本語と英語でのケーススタディの作成と配布を通じて、世界の学識者・政府関係者・国際機関関係者・企業・起業家・NGOなど、様々なステイクホルダーに発信します。
【JICAと民間セクターの連携:途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査】
JICA(国際協力機構)は、ODA(政府開発援助)など従来の公的機関の援助だけではなく、ビジネスを通じた課題解決を推進しています。開発途上国での事業展開を考える企業を支援するため、開発途上国の公的機関とのつながりや情報、国内外のネットワークを活かす場としての民間連携室(現・民間連携事業部)を2008年に設置しました。 2010年には、日本企業による貧困層が抱える課題の解決に貢献するビジネスを支援することを目的に、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」を開始し、2016年4月までに10回の公示、通算114の案件を採択をしています。そして2015年にSDGsが採択されたことを受け、2017年7月には、より広い途上国の課題解決に向けた「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」が開始される予定です。 SDGsのゴール/ターゲットに則して具体的な事業目標が設定されているかどうかに加え、評価の視点として、「SDGs達成への貢献がロジカルに示されているか」、「SDGs達成の貢献度を定量的に測ることが可能か」などが重要になります。また、ビジネスモデルや分野にかかわらず、調査前に確認すべきこととして、「現地ニーズに沿った事業であること」なども求められます。
民間セクターがSDGs実施のために、考慮すべきことがらも存在します。その一例をご紹介します。
【政府系開発機関・民間セクター等の責任】
国際NGOのOXFAMは、公的資金を運用して投融資を行う立場である開発金融機関(Development finance institution: DFI)は、融資先となる企業や金融仲介機関の租税回避地を利用させないなどの責任ある税慣習の構築を促進すべきだと提言します。そして企業には、情報の公開による透明性のある租税行動が必要だとしています。それは開発政策を進める途上国政府にとって、自国の教育・保健医療などを提供するための税収確保(国内資金動員:Domestic Resource Mobilization)が非常に重要であるためです。また、開発指標自体に税の視点を確立させる必要だという指摘も存在します。
(写真:UN Womenウェブサイトより、CSW61 Youth Forumの様子)